トレンチコートやピーコートはともかく、フライトジャケットやフィールドジャケットなどのズバリ戦闘服が民間で普通にカジュアルに着られているって、よく考えたら凄いコトですよね。
その中でも、M-65 (M-1965) はその優れた実用性により最も広くコピー品が作られ、商業ベースでもメンズファッションに大きく貢献しています。
実はこのM-65、特徴的な4つの大きなポケットとフードが内蔵できる襟やウエストを絞る引き紐など、実用的なデザインは早くから完成していたものの、シルエットや前開きなど実際の戦闘に耐えうるように改良を重ねて、現在の形に落ち着くまで20年もかかったそうです。
不吉なことに、核戦争が起こっても出来る限り生き延びることを想定した作りだとか(苦笑) そんな生粋の戦闘服がなぜ街着へとなったのか?
始まりは、アメリカにおいてベトナム戦争に反対する大規模なデモが起こった頃に遡ります。軍から大量に放出されたM-65の背中に各個人がメッセージを書き込んでアピールしたことで、一般に認知され始めたのがきっかけでした。
また、ライダースジャケットと同様に、どこかアウトサイダーな雰囲気があるので、パンクファッションのアイテムとして取り入れられたり、戦争映画以外でも配役の個性を引き出すアイテムとして使われ始めました。
ロバート・デニーロが「タクシードライバー」で着ていたことは有名ですよね。シルヴェスタ・スタローンの「ランボー」やアル・パチーノの「セルピコ」も印象的でした。 僕個人的にはトム・ハンクスの「フォレストガンプ」での反戦デモシーンとジョン・レノンが着ていたのが印象深く、「テレビのトークショーに出るのになんでそんな格好しているんだろう?」と不思議に思ったもんです。(*実際にはオノヨーコと一緒に出演したときのものでCGでフォレストガンプに差替えている)
そんな反骨精神を表す象徴だったものが、だんだんと広まると同時に精神性よりも実は機能的であり使いやすいジャケットとして受け入れられ大衆化していったんですね。なんども言いますが、元々は戦闘服(笑) 人間の価値観って面白いな〜ってつくづく思います。
ちなみに、現代のM-65の着こなしでは「ちょっとドレス感を加えてやる」のがおすすめです。シャツやタートルニットに、テーラードパンツあるいはカラーパンツなどきれいなアイテムを合わせると程よく中和され垢抜けた大人のミリタリールックが完成です。
M-65自体がワイルドでちょっと泥臭さもはらんでいるので、うっかりインディゴのデニムに合わせると、まんまランボーになっちゃうのでお気をつけください(笑)