「宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧」柳田 由紀子 (著) |スティーブ・ジョブズは禅から何を学んだのか?

ブックレビュー「宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧」柳田 由紀子 (著)

スティーブ・ジョブズ氏が「生涯の師」として仰いだ日本人僧侶「乙川弘文」氏の足跡を追ったノンフィクションです。

2011年ジョブズ氏の死後、世界的に脚光を浴びることになった日本人禅僧侶「乙川弘文」(2002年没享年64歳)とはどんな人物だったのか。弘文氏に近しい人、関わってきた人を求めて、日本、アメリカ、スイスなどを巡る7年にも及ぶ取材で、少しづつ乙川弘文氏の生き様が明らかになっていきます。

ジョブズの集中力もシンプルへの愛情も禅修行からくるものだ。彼は禅を通じて直感を大事にする心を研ぎ澄まし、不純、不要なものを漉しきる方法を身につけ、そしてミニマリズムに基づく美意識を育んだのだ

ウォルター・アイザックソン(著)「スティーブ・ジョブズ」本文より

破戒僧

ジョブズ氏が自宅ガレージでAppleを起業したときから乙川弘文を師と仰ぎ以後30年の交流、そして人類の生き方を変えたiPhoneをはじめとするApple社の美しいデザインは禅が影響を及ぼしているとはどういうことなのか。

弘文氏の弟子、初期のApple社メンバー、禅国際布教総監、チベット仏教徒などのインタビューから、弘文氏の生い立ちからアメリカに渡るようになった経緯、アメリカで拠点を築きジョブズ氏との出会いと別れが紐解かれていきます。

しかし、奇妙なことにインタビューを重ねるほど、弘文氏の人物像がどんどんぼやけわからなくなってきます。
人によっては、神に遣わされた賢者のように慕う人もいれば、僧はおろか人としても感心できないと認めない人もいる。
そこに居るだけで大きな安心感に包まれ話す言葉に癒され導かれる人が多くいる一方で、常に生活は困窮し酒に浸り女にだらしない。まさに破戒僧。

泥中の蓮の如く

さらに様々な証言を重ねていくうちに、靄が徐々に晴れていくように、弘文氏の想いその生き方の真相が浮かび上がってきます。ジョブズ氏に影響を与えるような人だから、静謐な高貴が漂う聖職者のイメージをしていましたが、それをはるかに超える存在でした。

煩悩にまみれ挫折し、自ら願って地獄に堕ちる。
「泥中の蓮」
汚れ濁った沼地から生きてこそ咲く美しく清らかな蓮華。
これこそ真実の生き方であると定めた弘文氏。

ジョブズ氏も親に捨てられ養子に出されたことや、Apple社を起業するも追われ10年近く苦悩の日々を送ったことなどが、弘文氏の「泥中の蓮」という生き方に共鳴したのかもしれません。

「私は木々を飛び回る猿だ。助けを求める人を見つければ、木々から飛び降りて、ただ抱きしめ放さない」

柳田 由紀子 (著) 「宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧」本文より

不可解な死

小さな池で5歳の娘と共に溺死。
「弘文さんは泳げたはず」「酒に酔っていたため心臓麻痺」など、証言が一致しない不可解な死。
これは読み手によって解釈が変わってくる、いや、著者の意向でそれぞれの解釈に委ねているのではないかと感じます。

禅とは掃き清めること

柳田 由紀子 (著) 「宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧」本文より

こんな人におすすめ

  • 禅とビジネスの関わりに興味がある
  • 日本では無名の僧侶の乙川弘文氏がなぜ欧米では名高いのか
  • スティーブ・ジョブズ氏は禅から何を学んだのか
  • スティーブ・ジョブズ氏がなぜ人類を変えるようなヒット商品を出せたのか
  • 禅を学問ではなく実践としてどのように人生に関わるのか

宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧
単行本

柳田 由紀子 (著)

AKI yoshida
”センス”は限られた人が与えられた才能ではなく、単なるデータの集積。インプット&アウトプットの繰り返しで誰でもセンス良くなれます。キャリア20年の元セレクトショップのオーナーバイヤー。年間ダウンロード数8,000曲を超える重度のSpotify中毒者。ネコ好き。これまでケガした野良や施設から保護してきたネコは4ニャン。

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